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質の良い精子の条件とは?メリットや質を高める時にしたいこと

「質の良い精子とはどのようなもの?」と疑問に思う方はいるのではないでしょうか。
実は精子の質は専門機関で調べることができ、質が良くなることで自然妊娠の可能性が高くなることがわかっています。

そこで、本記事では質の良い精子の条件やメリット、質を高める方法についてご紹介します。
質の良い精子について知りたい方のお役にたつ記事となるでしょう。

質の良い精子の条件とは

妊娠の確率を上げる条件のひとつに、精子の質があります。
質の良い精子の条件とは、WHOの精液所見の基準を満たしたものです。
この数値は「1年以内に女性が自然妊娠できた時の男性の精液所見」をもとにし、自然妊娠が可能な最下限値を表しています[1]。

つまり、最低限越えておかねばならない値ということです。
では、以下の4つの項目において内容をご紹介します。

精子全体に対して正常な形をしたものがどれくらいあるかを表した指標が「正常形態率(せいじょうけいたいりつ)」です。
自然妊娠の可能性が高くなるためには、4%を超えていると良いとされています。
一方で、下回ってしまうと不妊の原因とされ「奇形精子症」と診断されることがあります。

精液量

どの程度精液が射出されたかを示したものです。
1.4ml以上が正常値とされています。

1ml以下の場合「逆行性射精(ぎゃっこうせいしゃせい)」と診断されます。
逆行性射精では射精後の尿が白くにごったり、ドロドロしたものが出てくることが特徴です。

妊娠させる可能性が限りなく低くなるため、尿の性状が上記のような場合、専門機関の受診が必要なことがあります。
糖尿病や前立腺肥大の治療薬が原因になることもあるため、治療中に妊活する方は主治医へ相談するとよいでしょう。

濃度

精液1mlの中に精子がいくつ含まれているかを表したものです。
1600万/ml以上が正常値とされています。
高ければ精子の数が多く、妊娠の確率が高くなるといえるでしょう。

1600万/mlを下回ると「乏精子症(ぼうせいししょう)」と診断されます。

運動率

動いている精子の割合を示したもので、正常値は42%以上です。
下回ると「精子無力症(せいしむりょくしょう)」と診断されます。
低下の原因は「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」という静脈にこぶができる疾患や、長期にわたる禁欲などです。

観察した時に動いている精子が多いと運動率が高いといえます。
元気な精子は卵子に向かって活発に進んでいきます。

質の良い精子のメリット

質の良い精子の条件についてご紹介しました。

では、質が良いとどのようなメリットがあるのでしょうか?
以下で3つご紹介します。

不妊治療がスムーズに

精子の質が高くなると不妊治療がスムーズになります。
理由は、男性側にも不妊の原因があることも十分に考えられるからです。

WHOの調査によると、不妊になる原因を性別で見た時に、原因が男性側にある割合は48%であることがわかりました。
つまり不妊の約半数は、男性が原因であるということです。男性側の精子の質を高くすれば、約半数の不妊を改善できる可能性があるのです。

不妊に悩むカップルは、男女のどちらに原因があるか専門の医療機関で検査してもらうとわかります。
男性側に原因があるとわかれば、精子の質を良くする生活習慣や治療が必要になります。

代表的な不妊治療法である「シリンジ法」も、男性の精子の質が悪ければ成功率は低くなってしまいます。
詳しくは「シリンジ法での妊娠成功率を上げるための方法とメリット・デメリット」をご覧ください。

女性の負担が少なくなる

女性の負担が少なくなるのもメリットです。

不妊治療というと、多くが女性側の採卵による治療が選択され、女性の身体的負担が多くなる傾向があります。

不妊の原因が精子にあるかどうか検査し、適切な対策がとれれば女性の身体的負担や治療による金銭的負担が少なくなる可能性があります
男性側も射精できているから問題ないと思わず、精子の質に問題がないかどうか確認する必要があるでしょう。

不妊治療で受ける女性のリスク・ストレスについては「不妊治療のストレス・不妊うつとは?原因や対処方法について」で詳しく解説しています。
合わせてご覧ください。

自然妊娠の可能性が高まる


精子の質が高くなると、自然妊娠の可能性が高まります
とくに精液量、濃度、運動率の数値が高ければより妊娠しやすくなるのです。
これらの数値をかけ合わせて算出する指標に、「総運動精子数(そううんどうせいしすう)」があります。

動いている精子の総数を示し「精液量」×「濃度」×「運動率」で求められます。
正常値は1638万で、これ以上であれば自然妊娠が可能です。

いずれかが著しく低いと総運動精子数の値も低くなるため、それぞれがバランス良く高い値を維持する必要があります。

精子の質の調べ方

質の良い精子にはメリットがあり、妊娠率が高まる可能性があるとわかりました。
では、精子の質はどのように調べるのでしょうか?

男性側の不妊の原因は「泌尿器科的検査」と「精液検査」により調べます[2]。
これらのうち、採取した精液から精子の質を調べられる方法は精液検査です。

精液検査は自費診療のためクリニックにより料金はさまざまですが、多くが数千円程度で受けられます。

精液検査で調べられる項目と見るべき所見には以下のようなものがあります。

項目

所見

正常と奇形の割合を調べる

精液の量

一度の射精による精液の全量を調べる(多すぎ、少なすぎなど)

数や濃度

精液の中に含まれる精子の数がどれくらいかを調べる

運動率

動いている精子の量を調べる

特に全体に対して活発に動いている精子(前進運動精子)の割合

pH

射精後1時間以内における精子のpHを測定

動いていない精子の中で死んでいるものの程度を知る

⇒染色すると死んでいる精子は頭が赤く染まる

肉眼所見

肉眼で精液の色を確認する

正常:白色~白色

血液が混じっていないか(血精液)

白血球が混じっていないか(膿精液)など

【精液検査の注意点】
1.精子の脆弱さを考慮する
精子は外部環境(温度や紫外線)の影響を受けやすいため、射精後時間が経ったものを検査すると質が低下していることがあるからです。
とくに自宅で採取したものをもっていくと、病院に着くまでに死んでしまうこともあります。

2.検査は1度限りでなく複数回行っておく
生活習慣や疲労・ストレスによっても精子の質が変化するからです。
何度か検査することで原因がわかることもあります[3]。

精子の質を高める方法

精子の質を高めるためには、生活習慣を見直すのが鉄則です。
日常生活で気を付けることを以下でご紹介します。

また、生活習慣以外にも外科的手術や服薬による治療法もありますので、あわせてご紹介します。

食事に気をつける

食事に気をつけ、規則正しいバランスのとれたものを食べましょう
精子の質を高めるため、おすすめの食事と好ましくない食事についてご紹介します[4][5]。

【おすすめの食事】
低糖質・高たんぱく・低カロリーで亜鉛や鉄を含んだ食材を使うものがよいでしょう。

  • ニンジンサラダ:千切りのニンジンにセロリとツナ缶を混ぜ、調味料で味付けするだけ
  • カキのミルク煮:カキと季節の野菜を炒め牛乳で煮込み、スープの素と塩コショウで味付けする
  • ビーフストロガノフ:牛赤身肉を玉ねぎ・マッシュルームと炒めて赤ワインで煮込む

【好ましくない食事】
脂質や炭水化物が多い食材を使った料理は好ましくありません。

  • そば・うどんだけといった単品料理
  • カップラーメン
  • レトルト食品
  • ファストフード
  • 濃い味つけのもの
  • 甘い缶コーヒー

射精を定期的に

定期的に射精しておくことも大切です。
実は禁欲しすぎると質の悪い精子が増えてしまいます[6]。
目安は週1回以上射精しておくことです。

射精しすぎると「質の良い精子が減ってしまう」と心配になる方もいるかもしれません。
しかし、精子は次々と作られていますので過度に心配しなくても大丈夫です。
定期的に射精し、精子のコンディションを整えてリフレッシュしておくとよいでしょう。

適度な運動

適度な運動も大切です。
あまり動かずに座っている時間が長いと精巣の温度が上昇します。

精巣機能と温度に関する研究では、精巣の温度が上昇すると精子の生成に悪影響を及ぼすことがわかっています[7]。
目安は体温よりも2~3度低い状態。適度に運動し、精巣温度を下げておくことが大切です。

また、肥満も不妊の原因になるといわれています。
運動により精巣温を下げることと、痩せることを意識するとよいでしょう。

十分な睡眠

精子の質を高めるためには、十分な睡眠も必要です。

十分な睡眠というのは長すぎてもいけません。
中国・重慶の研究では、1日の睡眠時間が7.0〜7.5時間の男性と比較し、9.0時間以上または6.5時間以下の男性で精液の質が低下したとの結果が出ています[8]。
よって、7〜7時間半程度の睡眠時間を確保すると精子の質が高くなる効果があります

精液検査して結果が思わしくなかった男性は、睡眠時間を見直すことで改善する可能性があるといえるでしょう。

禁酒・禁煙

禁酒や禁煙も有効な対策です。
飲酒は、精液の量と形に悪い影響を及ぼすといわれていますが、時々飲むという方にはそれほど大きな影響はありません。

しかし、喫煙習慣のある方は精子の数・運動率・形へ悪影響を及ぼします
よって禁煙はできればした方が良いのですが、飲酒は軽くたしなむ程度であれば問題ないということです。

その他

上記以外に服装・栄養摂取・服薬などにも気を配ることが大切です。
また、必要に応じて手術や投薬による治療も検討しましょう。

まず服装については、精巣温を上げすぎないよう通気性の悪い下着はできるだけ避けてください。締めつけのあるブリーフよりも、トランクスの方が適しています。

栄養面では、サプリメントによる栄養摂取の補助が有効です。とくに抗酸化作用のあるコエンザイムQ10は、乏精子症と精子無力症をあわせもった「乏精子無力症(ぼうせいしむりょくしょう)」に対して濃度と運動率を向上させる効果があります[9]。

服薬については、男性型脱毛症の治療薬(フィナステリド、デュタステリド)によって精液の質が低下するといわれています。妊活中の服用は一旦中止した方がよいでしょう。

手術は、精子形成障害のうち30%が原因となっている精索静脈瘤の手術が有効です。この疾患は手術によって改善しやすいといわれています[10]。

投薬治療については、漢方薬・血流改善薬の服用や、注射による治療があります[11]。

体外受精の成功率を食生活・生活習慣など身近なところで上げる方法」の記事では、食生活や生活習慣など身近なところから、体外受精の成功率を上げる方法をご紹介しています。
どなたでもすぐに実践していただける内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。

精子に関わるよくある質問


精子に関わるよくある質問にお答えします。

精子の寿命

精子の寿命は約3日です[12]。
放出された精子は、膣内の環境(酸性)や白血球からの攻撃によって大部分が死滅してしまいます。
精子は卵管を目指して進んでいき、さまざまな障害をのりこえてようやく卵子のもとにたどり着きます。精子の寿命を考えると、受精はまさに奇跡的な瞬間といえるでしょう。

精子の質と年齢

精子の質の低下は、35歳ごろを境に徐々に起こっていきます[13]。
昨今は晩婚化もすすんでおり、年齢による精子の質の低下が不妊の原因になることは少なくありません。
だからといって、とにかく早く結婚しましょうというわけではなく、質の低下が起こる年齢を男性も把握しておいた方がよいということです。35歳に近い男性は、精子の質を高める方法を意識しておきましょう。

筋トレの精子への影響

筋トレの精子への影響にはどのようなものがあるのでしょうか。

精液所見に問題のある男性に上半身と下半身に対して数種類の筋トレをしたところ、12週目から徐々に改善し、24週目には顕著に改善が見られたという研究があります。
最低3ヵ月ほどの筋トレ習慣を身に付ければ、精子の質が上がる可能性があります。さらに、運動をやめても1ヵ月程度は改善した状態が維持されました[14]。

当サイトで精子提供を受けられた方のご感想

こちらでは、当サイトを運営する「I LOVE BABY」をご利用頂き、精子提供を受けた方のご感想を紹介します。精子提供をお考えの方はぜひご覧ください。

Aご夫妻

私達は夫が無精子症の診断をうけ、こちらにサポートにお願いすることにしました。カウンセリング後に病院を紹介頂き、スムーズに体外受精へ進めることが出来ました。

何より助かったのは費用面です。様々なサポートを速やかにして頂けましたので、全く困らずに済みました。
お陰様で、3回目の体外で妊娠出来、現在7週目を迎え夫婦共に嬉しさを噛み締めております。

お忙しい中ボランティアでここまで真剣にして頂き、本当に感謝しかないです。

精子の質を高めるためにはさまざまな取り組みが必要

いかがでしたでしょうか?
本記事では質の良い精子の条件やメリット、質を高める方法についてご紹介しました。

生活習慣を見直したり、治療したりすることで精子の質は高くなります。検査費用も高額ではないため、決して敷居の高いものではありません。
精子の質が良くなることで不妊治療がスムーズになったり、女性の負担が少なくなったりと多くのメリットがあります。
何より自然妊娠の可能性が高まることは、不妊に悩む方にとってうれしいことでしょう。

「I LOVE BABY」では、精子提供をはじめ、不妊治療に関する様々な支援を行っております。
また、治療費用に関するご相談も受け付けております。費用を気にすることなく、最後まで治療を受けて頂けるよう、ご提案・サポートをいたします。
不妊治療でお困りの方は、ぜひご相談ください。

精子提供の無料相談&支援サイトの一般社団法人I LOVE BABY

 

[1]参照:プライベートケアクリニック東京
[2]参照:一般社団法人日本生殖医学会
[3]参照:三軒茶屋ARTレディースクリニック
[4]参照:レディースクリニック北浜
[5]参照:ユニ・チャーム
[6]参照:北村クリニック
[7]参照:JSTAGE:(PDF)精巣機能と温度環境一ヒト精巣DNA合成およぼす温度の影響一
[8]参照:PubMed:(PDF)Inverse U-shaped Association between Sleep Duration and Semen Quality: Longitudinal Observational Study (MARHCS) in Chongqing, China
[9]参照:PubMed:(PDF)Coenzyme Q10 Improves Sperm Parameters, Oxidative Stress Markers and Sperm DNA Fragmentation in Infertile Patients with Idiopathic Oligoasthenozoospermia
[10]参照:JSTAGE:(PDF)精索静脈瘤と男性不妊症
[11]参照:一般社団法人日本生殖医学会
[12]参照:一般社団法人日本生殖医学会
[13]参照:長崎県ホームページ
[14]参照:Resistance exercise modulates male factor infertility through antiinflammatory and antioxidative mechanisms in infertile men: A RCT